チェストプレスはベンチプレスに換算できる?重さを比べる前に知りたいこと

マシンの重さ、ベンチだと何kg?を紹介する記事の表紙イラスト 筋トレの基本

チェストプレスで前より重い設定を押せた。「では、ベンチプレスなら何kg持てる?」と気になることがあります。数字で比べたくなりますが、そのまま開始重量にするのは避けましょう。

チェストプレスの表示重量から、ベンチプレスの重量へ、誰にでも使える一定の倍率では換算できません。機種、押す方向、動かす範囲、慣れなどが違うためです。本記事では、根拠を確認できない換算表や「必ず○倍」という式は掲載しません。

代わりに、自分の成長を記録する方法と、初めてベンチプレスへ移るときの進め方を説明します。

同じ「kg」でも、同じ動作の負荷とは限らない

バーベルのベンチプレスでは、バーとプレートを含めた重さを支え、自分で動く方向を安定させます。一方、チェストプレスでは、マシンのレバーやケーブルなどを通して抵抗が伝わります。表示された数値だけでは、両者の条件はそろいません。

さらに、チェストプレスという同じ名前でも、プレートを載せるもの、ピンで重りを選ぶもの、左右の腕が独立して動くものなどがあります。メーカーの公式仕様にも、腕ごとの開始抵抗が記載される製品があります。[1]これは、プレートの数字だけで考えられない機種が実際にある例です。

この製品の仕様を、すべてのマシンの計算式に使うこともできません。別の機種へ移ったときは、表示が同じだからと前回と同じ感覚で押さず、説明を確認して軽い設定から始めます。

40kgを押せたら、ベンチも40kgからでいい?

いいえ。マシンで押せた数字を、そのままベンチプレスの開始重量にはしません。例えばチェストプレスで40kgを10回できても、ベンチで40kgを10回できるか、1回ならできるかは、その記録だけでは分かりません。この40kgは説明用の例で、初心者への推奨重量ではありません。

「何kg持てるか知りたい」という気持ちと、「今日どの重さで練習するか」は別の問いです。前者が気になっても、初回の目的は限界を測ることより、教わった動きを落ち着いて繰り返せるか確かめることにしましょう。

換算式をそのまま使えない3つの理由

1.マシンの構造がそろっていない

力が伝わる仕組み、持ち手の軌道、開始位置などが異なります。機種名を区別しない換算表では、その違いを扱えません。「チェストプレス○kg」だけでなく、どの機械かまで分かる記録が必要です。

2.動かす範囲と回数が違う

少ししか動かさず押せた重さと、決めた範囲を安定して往復できた重さは、同じ記録ではありません。また、1回だけ押せる重さと、10回繰り返した重さも分けます。比べる前に、何を測った数字なのか確認しましょう。

「何回できたか」から同じ種目の最大挙上重量を推定する式と、「別の器具・別の種目へ換算する式」は別の話です。前者の式を見つけても、その後へ独自の倍率を足して、ベンチの開始重量を決める根拠にはしません。

3.バーベルを安定させる動作にも慣れが必要

胸の筋肉を使う点は共通していても、バーを持つ位置、下ろす方向、支える感覚は異なります。マシンの経験がある人でも、初めてのベンチプレスは新しい動作として確認しましょう。

機械とフリーウエイトのトレーニングを比較した初心者男性の研究もありますが、そこで得られた結果は、すべての機種からバーベルへ共通の倍率を作るものではありません。[2]筋力が付くことと、別種目で同じ数字を扱えることは分けて考えます。

マシンの重さをベンチへ換算せず別々に記録する図
別の器具の数字より、同じ条件での前回の自分と比べます。

表示の「kg」は、どこまで含むかを確認しよう

重さを記録する前に、ピンで選んだ表示なのか、片側に載せたプレートなのか、左右の合計なのかを確認します。バーベルはバー自体の重さも含めますが、バーの種類で重さは異なるため、見た目だけで決めないでください。

Life Fitnessの一部のプレート式製品では、プレートを載せる前の開始抵抗が片腕ごとに記載されています。[1]これは機種による違いの例です。この値を他のマシンへ足したり、プレート重量に単純加算すれば手元の抵抗が分かると考えたりはしません。

機械の表示と自分の記録の単位がそろっていないと、次回に違う設定を再現してしまいます。分からない場合は「この表示は片側ですか、合計ですか」とスタッフに聞き、答えを記録に添えましょう。

成長を確認するなら、同じ条件をそろえる

記録すること残す内容の例
機種・設定機械の名前や位置、座席番号、持ち手
重さ・回数表示重量、各セットでできた回数
動き同じ範囲で押して戻せたか
体の様子痛み、反動、余裕の有無

例えば「前回と同じ機械・同じ座席で、重りをぶつけず同じ回数できた」という比較なら、条件をそろえやすくなります。数字が増えた場合も、動かす範囲が短くなっただけではないかを一緒に確認してください。

反対に、違うジムのマシンで数字が下がっても、それだけで筋力が落ちたとは限りません。別の機種の記録として分け、軽い設定から自分の基準を作り直します。

スマホに残せる記録例

機械:入口から2台目のチェストプレス
座席:自分が合わせた番号
重量:機械の表示を記録(単位・片側か合計かも確認)
回数:1セット目/2セット目を別々に
動作:同じ範囲で押し、ゆっくり戻せたか
体調:痛み・反動・どれくらい余裕があったか

これは記録のひな型で、全員に同じ座席番号や回数を勧めるものではありません。ベンチプレスを始めたら別の欄を作り、バーを含む重量、補助の有無、動かせた範囲も記録します。補助を受けた回と、自力だけでできた回を同じ成績として扱わないことも大切です。

初めてベンチプレスをする日の進め方

マシンの数字を持っていく代わりに、「ベンチプレスは初めてです。安全装置と軽い負荷での動きを教えてください」とスタッフに伝えましょう。混雑して教われない日は、慣れているマシンを使い、別日に確認する選択もできます。

最初に確認するのは、ラック、ベンチの位置、安全バー、バーの重さ、取り外し方です。プレートを付けていないバーでも、人によっては重すぎます。「空のバーなら誰でも大丈夫」と決め付けず、より軽い練習用器具などをスタッフと相談してください。

初回から最大重量を試す必要はありません。安全装置と補助の方法を確認し、扱える軽い負荷で、持ち上げる・下ろす・戻す流れを練習します。一人で限界まで行い、バーが戻せるかを試さないでください。

Cleveland Clinicの解説も、ベンチプレスでは補助者を確保し、重さを制御することを重視しています。[4]安全バーの高さや補助の合図は、実物を使って指導を受けましょう。写真や記事だけで、自分のラックの設定が適切だとは判断できません。

迷っている場面その日の選択
換算した重さを試したい換算値でプレートを決めず、軽い負荷で動作を教わる
空のバーでも重い無理に続けず、軽い練習用器具をスタッフと相談
補助や設定の説明を受けられない初挑戦を延期し、使い慣れた器具を選ぶ
肩の痛みやしびれがある試技を中止。症状に応じて医療機関へ相談

突然の強い肩の痛み、腕を動かせない、感覚がなくなるなどの場合は、早急に医療機関へ相談してください。[5]痛みを重量換算や気合の問題で片付けないようにしましょう。

「換算できないなら、マシンは意味がない?」

意味がないわけではありません。運動初心者男性36人が10週間トレーニングした比較では、マシン、フリーウエイト、途中で切り替える方法のいずれでも、筋力などの改善が見られました。[2]

ただし、この研究の対象や測定方法には限界があり、すべての人・器具で同じ結果を保証するものではありません。それでも「マシンでは体づくりにならない」と決め付ける理由にはなりません。目的、使いやすさ、指導を受けられる環境から選びましょう。

胸に効く感覚が分からない場合は、重量の換算より先に、チェストプレスの座席・重さ・動作の確認へ戻ってください。ジムでの流れが決まらない場合は、初心者の30分ジムメニューも参考になります。

2023年のシステマティックレビュー・メタ分析でも、筋力の伸びには、練習した器具・動作に対応した特徴がありました。一方、筋肉の大きさの変化を比べた解析では、両方式の有意な差は検出されませんでした。[3]

複数の研究をまとめた結果でも、個々の機種をつなぐ換算式にはなりません。筋肥大の研究数や測り方にも限界があり、「全員が同じだけ育つ」という保証でもありません。筋肉づくりが目的ならマシンも選択肢、ベンチプレスの上達が目的ならその動作を教わる、と目的を分けると選びやすくなります。

よくある疑問:平均値や推定MAXなら使える?

別々の人の平均値を割り算しても、自分の換算率にはなりません。体格、経験、機種、測定条件がそろっていないからです。「平均より上か下か」だけで、次の練習重量を変える必要もありません。

また、1RMとは「1回だけ挙げられる最大重量」のことです。回数から推定する式はあっても、それは実測値でも、別種目へ持ち替えてよい重さでもありません。数字を知るために、初心者が一人で限界まで試す必要はありません。

次にすること:記録を分け、新しい種目は軽く始める

今日のチェストプレスは、その機械の記録として残します。ベンチプレスを始める日は、換算した重さを目標にせず、安全装置と軽い負荷での練習から始めましょう。

自分の進歩を見る基準は、他人や別の機種の数字を超えたかどうかだけではありません。同じ条件で、前回より安定して動かせたか。その確認を積み重ねるほうが、初心者には使いやすい記録になります。

参考資料

  1. Life Fitness:Plate Loaded Decline Chest Press(機種ごとの開始抵抗の仕様例)
  2. Aerenhouts D, D’Hondt E. Using Machines or Free Weights for Resistance Training in Novice Males? A Randomized Parallel Trial. 2020.
  3. Haugen ME, et al. Effect of free-weight vs. machine-based strength training on maximal strength, hypertrophy and jump performance. 2023. 6週間以上の介入研究の系統的レビュー。種目間換算の検証ではありません。
  4. Cleveland Clinic:How To Have Proper Bench Press Form。補助者、重さの制御、バー自体も負荷になること。
  5. NHS:Shoulder pain。早急な医療相談が必要な肩の症状。

資料確認:2026年10月26日。記録表は当ブログの実用提案です。すべての機種を対象とする換算式を検証したものではありません。

この記事を書いた人
理学療法士

理学療法士/「ひじりの筋トレ健康ノート」運営者。病院で理学療法士として働いています。筋トレの始め方や健康づくり、痛みが気になるときの運動の考え方を、参考資料を示しながら分かりやすくお伝えします。

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