「膝が痛いけど、筋トレしても大丈夫?」
「筋トレをすると、膝がもっと悪くなりそう……」
「でも、筋肉をつけたほうが膝に良いとも聞く……」
このような疑問を持っている方は多いのではないでしょうか。
私は病院で理学療法士として働きながら、運動や身体の使い方についても指導しています。
この記事では、膝が痛いときに筋トレをしてよいのかについて、できるだけ難しい言葉を使わずに説明します。
先に結論を言うと、
「膝が痛い=筋トレをしてはいけない」ではありません。
むしろ、膝の状態によっては、適切な運動や筋力トレーニングが役に立つことがあります。
ただし、「どんな膝の痛みでも筋トレしてOK」という意味ではありません。
ここがとても大切です。
そもそも、なぜ膝が痛くなるの?
膝の痛みには、いろいろな原因があります。
例えば、
- 運動のしすぎ
- 筋肉や腱への負担
- 膝のお皿の周りの痛み
- 半月板など膝の中の組織の問題
- 靭帯などのケガ
- 変形性膝関節症
- 炎症など
などがあります。
つまり、
「膝が痛い」という情報だけでは、原因を決めることはできません。
同じ「膝が痛い」という症状でも、必要な対応が違うことがあります。
そのため、この記事では「あなたの膝は○○です」と診断するのではなく、一般的に膝が痛い人が筋トレをするときに知っておきたい考え方を紹介します。
膝が痛くても筋トレしていい?
答えは、
「痛みの原因や状態によっては、してもよい」
です。
特に変形性膝関節症では、運動療法は痛みをやわらげたり、身体の動きや日常生活を良くしたりする目的で推奨されています。
日本整形外科学会の「変形性膝関節症診療ガイドライン」でも、運動療法は有用であり、実施することが推奨されています。
海外のガイドラインでも、膝の変形性関節症に対して運動は強く推奨されています。筋力トレーニングだけでなく、歩行、自転車、水中運動など、さまざまな運動方法が選択肢になります。
つまり、
「膝が痛いから、何もしない」
という考え方がいつも正しいわけではありません。
なぜ筋トレが膝に役立つの?
ここでは、できるだけ簡単に説明します。
膝を「ドア」にたとえてみましょう。
ドアを動かすとき、ドアだけが頑張っているわけではありません。
ドアを動かすための「周りの部品」があります。
膝も同じです。
太ももやお尻、ふくらはぎなどの筋肉が、膝の動きを助けています。
特に太ももの前にある大腿四頭筋は、立つ・歩く・階段を上るなど、日常生活で大切な筋肉です。
筋肉を上手に使えるようになると、
筋肉 → 膝の動きを助ける → 日常生活が行いやすくなる
という良い流れを作れる可能性があります。
ただし、
「筋肉をつければ、どんな膝の痛みも治る」
という意味ではありません。
ここは注意してください。
「痛いけど我慢して筋トレ」は正解?
これはおすすめしません。
筋トレでは、
「痛みに耐えれば耐えるほど効果がある」
というわけではありません。
例えば、スクワットをして膝に強い痛みが出ているのに、
「筋肉をつけるために我慢しよう!」
と続けるのは、一度立ち止まって考える必要があります。
痛みが出る場合は、
- 回数を減らす
- 動きを小さくする
- 重さを軽くする
- 別の運動に変更する
- 一度休む
- 医療機関などで相談する
といった方法を考えます。
大切なのは、
「痛いか、痛くないか」だけで判断するのではなく、運動後の状態も含めて自分の身体を観察すること
です。
膝が痛いときに大切な「3つのポイント」
① いきなり重い重量にしない
筋トレをするときは、いきなり重い重量を使う必要はありません。
例えば、
「スクワット100kgができるようになりたい!」
という目標があったとしても、膝が痛い状態でいきなり100kgに挑戦する必要はありません。
まずは自分に合った負荷から始めます。
筋トレでは、
「重ければ良い」わけではありません。
正しい動きを覚えることも大切です。
② 痛みが強くなる運動は一度見直す
同じスクワットでも、人によって動き方は違います。
足の位置、膝の曲げ方、身体の傾き、重量、回数などが変わるだけでも、身体への負担は変わります。
そのため、
「スクワット=膝に悪い」
と決めつけることも、
「スクワット=絶対に安全」
と決めつけることもできません。
その人の状態に合わせて運動を調整することが大切です。
③ 膝だけを見るのではなく、身体全体を見る
膝が痛いからといって、膝だけが問題とは限りません。
例えば、
- 股関節
- お尻
- 太もも
- 足首
- 足の裏
- 体幹
など、身体はいろいろな場所が協力して動いています。
家を支える柱をイメージすると分かりやすいでしょう。
一本の柱だけで家を支えるのではなく、何本もの柱で家を支えています。
身体も同じです。
膝だけではなく、身体全体を動かしていくことが大切です。
膝が痛い人におすすめの筋トレは?
ここでは「誰でも絶対に安全」という運動を紹介するのではなく、一般的な筋力トレーニングの例として紹介します。
① 椅子からの立ち上がり
まずおすすめしやすいのが、椅子から立ち上がる運動です。
やり方
- 安定した椅子に座ります。
- 足を床につけます。
- ゆっくり立ち上がります。
- ゆっくり椅子に座ります。
これだけです。
特別な器具は必要ありません。
普段の「立つ・座る」という動作を利用して、脚の筋肉を使います。
ただし、膝の痛みが強くなる場合は無理に続けないでください。
② 膝を伸ばす運動
椅子に座って、膝をゆっくり伸ばす運動もあります。
やり方
- 椅子に座ります。
- 片方の脚をゆっくり伸ばします。
- ゆっくり戻します。
- 反対側も行います。
太ももの前の筋肉を使う運動です。
ただし、膝の痛みの原因や状態によって適した運動は変わります。
「この運動をすれば必ず良くなる」と考えるのではなく、自分の状態に合わせて行いましょう。
③ お尻の筋肉を使う運動
お尻の筋肉も、立つ・歩くなどの動作で重要です。
例えば、
- ブリッジ
- ヒップヒンジ
- 軽いスクワット
などがあります。
ただし、これらも膝の状態によって適した方法や負荷が変わります。
筋トレを「やめたほうがいい」場合もあります
ここは非常に重要です。
膝の痛みがある人全員に、
「筋トレしてください」
と言うことはできません。
例えば、
- 強い痛みがある
- 大きく腫れている
- 膝が熱を持っている
- ケガをした後から強く痛む
- 体重をかけられない
- 膝が動かせない
- 膝がロックされたように伸びない
- 膝が何度もガクッと崩れる
- 発熱があり、膝が赤く熱を持っている
などの場合は、自己判断で筋トレを続けるのではなく、医療機関などへの相談をおすすめします。
特に、強い腫れ・熱感・発熱、体重をかけられない、膝がロックして動かせないなどは、早めの医療的な評価が必要になる場合があります。
「膝が痛い=安静」は正しい?
これも、必ずしもそうとは限りません。
もちろん、ケガをした直後など、状況によっては運動を控える必要があります。
一方で、変形性膝関節症などでは、運動療法が治療の重要な選択肢になっています。日本整形外科学会も運動療法を推奨しています。
つまり、
休むことも大切。
そして、
動かすことも大切。
大切なのは、
「今の自分の膝には、どのくらいの運動が合っているのか?」
を考えることです。
理学療法士として伝えたいこと
私が膝の痛みについて一番伝えたいのは、
「痛いから何もしない」でも、「痛くても我慢して鍛える」でもない
ということです。
その間に、
「今の身体に合う運動を選ぶ」
という考え方があります。
筋トレは、ただ重いものを持つことではありません。
自分の身体を動かし、
「この動きなら大丈夫かな?」
「今日は少し軽くしよう」
「この運動ならできそうだ」
と、自分の身体を観察しながら進めることも筋トレの大切な部分です。
まとめ
今回の記事のポイントをまとめます。
膝が痛くても筋トレしていい?
場合によっては、筋トレを行うことができます。
特に変形性膝関節症では、運動療法は痛みや身体機能、日常生活機能の改善を目的として推奨されています。
ただし、
「膝が痛い人は全員筋トレをして大丈夫」という意味ではありません。
膝の痛みにはさまざまな原因があるため、
- 痛みの強さ
- 腫れ
- ケガの有無
- 膝の動き
- 体重をかけられるか
- 日常生活への影響
などを考える必要があります。
そして、
強い痛み、強い腫れ、熱感、発熱、体重をかけられない、膝がロックして動かないなどの症状がある場合は、自己判断で筋トレを続けず、医療機関への相談を検討してください。
筋トレは、
「痛みを我慢して頑張るもの」ではありません。
自分の身体に合った方法で、少しずつ取り組むことが大切です。
この記事について
この記事は、膝の痛みがある方に向けた一般的な情報提供を目的としています。
ここで紹介している内容は、すべての方に当てはまるものではありません。
膝の痛みの原因や状態によって、適した運動や対応は異なります。
現在強い痛みがある方、ケガをした方、腫れや熱感がある方、膝が動かしにくい方などは、自己判断で運動を続けず、医療機関へご相談ください。
この記事を読んで「自分の膝はこの病気だ」と自己判断することもおすすめしません。
大切なのは、痛みを怖がりすぎることでも、痛みを我慢することでもありません。
自分の身体の状態を知り、自分に合った運動を選ぶことです。
私は理学療法士として、皆さんが「動くことをあきらめない」ための情報を、できるだけ分かりやすくお伝えしていきます。

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