腰痛があっても筋トレしていい?|理学療法士がやさしく解説

痛みと運動

「腰が痛いけれど、運動を休んだほうがいい?」「筋肉をつければ治る?」

腰痛があっても、状態に合った運動を取り入れられる場合があります。ただし、急に始まった痛み、脚のしびれ、尿や便の異常などがあるときは、筋トレより受診が先です。「腰が痛いから、とにかく腹筋を鍛える」と決めず、症状を確認してから考えましょう。

この記事で分かるのは、受診を優先する目安、長く続く腰痛と運動の研究、そして運動量を見直す方法です。筋トレだけで必ず治るとは言えませんが、何を確認すればよいかを知ることで、次の行動を決めやすくなります。

成人の腰痛を対象にした一般的な説明です。個別の診断や治療メニューを決めるものではありません。医師から運動について指示がある方は、その指示を優先してください。

最初に確認:筋トレより受診を優先する症状

腰痛に次の症状が伴う場合は、直ちに救急受診

  • 新たに尿が出にくくなった、尿や便を漏らすようになった
  • 股の間や肛門の周りの感覚が鈍くなった
  • 両脚に痛み、しびれ、感覚の低下、力の入りにくさがある
  • 胸の痛みがある、または大きな事故のあとに腰痛が始まった

筋トレは中止し、直ちに救急受診してください。安全に移動できない、症状が強いなどの場合は、日本では119番に連絡します。自分で運転せず、家族などに移動を頼むか救急車を要請してください。

発熱・急な強い痛み・急速な悪化は、当日中を目安に相談

発熱や悪寒、全身の具合の悪さを伴う腰痛、突然始まった強い痛み、短時間で悪化する痛みは、運動で様子を見ず医療機関へ連絡してください。

片脚でも新たなしびれや力の入りにくさがあれば、運動を再開する前に速やかに相談しましょう。安静でも軽くならない痛み、夜に強まる痛み、理由のない体重減少、日常生活を妨げる痛み、数週間たっても改善しない痛みも受診の理由になります。数週間は「それまで待つ」という意味ではありません。

受診の目安は英国NHS「Back pain」と日本整形外科学会「腰痛」を参考に、日本での行動が分かるよう整理しました。ここに当てはまらないだけで、安全や病名を判断できるわけではありません。

腰痛がある日の運動を考える順番:緊急症状、受診の必要性、個別の運動相談を確認する図

この図は判断の順番を整理するものです。診断や「運動してよい」という許可を出すものではありません。症状の詳しい内容は本文をご確認ください。

腰痛の原因によって、運動の考え方は変わる

腰痛は「腰の痛み」という症状の名前で、1つの病気の名前ではありません。筋肉や関節の問題のほか、骨折、神経への影響、感染など、さまざまな原因があります。「前に痛くなったときと似ている」だけでは、今回の原因は決められません。

病名が分かっている方や手術後の方は、一般記事の種目をそのまま使わず、担当の医師や理学療法士に内容を確認してください。骨粗しょう症などの持病や、転倒・事故のあとに痛みが出たことも、相談時に伝えたい情報です。

一方、長く続く腰痛では、痛みの強さと体の使いにくさに、身体の状態、睡眠、気分、生活環境などが関係することもあります。「気のせい」という意味ではなく、体と暮らしの両方を見て支援する考え方です。WHOのガイドライン紹介

「筋力が弱いから痛い」「姿勢だけが原因」と、記事を読んだだけで決めつけることはできません。

長く続く腰痛には、運動が役立つ可能性がある

成人の慢性非特異的腰痛(骨折や腫瘍などの特定の原因で説明できない、長く続く腰痛)を調べた2021年のCochraneレビューでは、運動療法は、何もしない場合・通常のケア・プラセボと比べて、痛みを軽くする可能性が高いとされました。この比較の根拠の確かさは「中程度」です。ただし、生活動作の改善は平均すると小さく、全員が同じように良くなるわけではありません。

また、WHOの2023年ガイドラインは、慢性一次性腰痛に対するケアの一部として、専門職が計画・提供する運動プログラムを条件付きで推奨しています。慢性一次性腰痛とは、3か月を超えて続き、ほかの病気などでは説明できない腰痛です。

WHOのこの推奨では、根拠の確かさは「低い」と評価されています。「役立つ可能性はあるが、効果の大きさなどには不確かさがある」という意味です。調べた対象や比較方法が違うため、Cochraneの評価と単純に同じものとして扱えません。

大切なのは、これらが急に起きた腰痛や骨折などの腰痛すべてに、自己流の筋トレを勧める根拠ではないことです。また、WHOは、ある1種類の運動がほかより優れていると結論づけるには、根拠が足りないとしています。

「普段の活動を続ける」と「重い筋トレをする」は別

NICEのガイドラインでは、腰痛のある人への説明に、普段の活動を続ける後押しを含めるとしています。運動を選ぶ際も、本人の必要性、希望、できることを考慮します。

これは、痛みを我慢してバーベルを持ち上げる、という意味ではありません。家の中を歩く、できる家事を行うなど、暮らしの活動と、筋肉に負荷をかけるトレーニングは分けて考えましょう。

痛みが強いときに休むことはあります。ただし、長期間ずっと寝て過ごすことは、一般的な腰痛の対処として勧められていません。できる日常活動を続けることと、いつもの筋トレを全部こなすことは分けて考えましょう。何ができるか迷う場合は、医師や理学療法士に相談します。

たとえば、重い荷物を持つとつらいけれど室内を歩くことはできるなら、荷物を持つ動作を無理に繰り返さず、できる活動について相談します。これは考え方の例で、「歩ければ筋トレも安全」という判定ではありません。

運動を始めるときは、種目名より「自分に合う量」

運動を検討できる状態なら、まず「何をできるようにしたいか」を決めましょう。たとえば、買い物まで歩く、椅子から立つ、仕事中の動作を楽にする、といった目標です。

診察や運動相談では、次のことを伝えると内容を決めやすくなります。

  • いつから痛いか、どの動作で痛むか、脚の症状があるか
  • 今できている活動と、困っている活動
  • 以前の運動経験と、現在使っている薬や治療

歩行、立ち座り、体幹の運動などが候補になる場合はありますが、全員に同じ種目・回数を勧めることはできません。持病のある人の運動についても、厚生労働省は、状態を確認して無理のない強度・頻度から始め、徐々に増やす考え方を示しています。慢性疾患を有する人の身体活動のポイント。この資料は高血圧や2型糖尿病など、状態の落ち着いた特定の慢性疾患を対象としたもので、腰痛の治療回数を示す資料ではありません。

回数・重さ・動く範囲・時間を分けて見直す

運動を取り入れられると確認できたら、まず専門職と開始する量を決めます。以前できた回数や動画の回数を、そのまま今の目標にする必要はありません。負荷とは、体にかかる負担のこと。重りだけでなく、繰り返す回数や動く範囲でも変わります。

見直すもの相談・調整の例
回数後半で症状が増すなら、同じ回数を無理にこなさない
重さ重りを使う必要があるか、軽くできるかを確認する
動く範囲深くしゃがむなどの動きで症状が出るなら、範囲や種目を相談する
時間・休憩長く続けたときの変化を伝え、時間や休憩を見直す

この表は調整を相談するための例です。痛みが増した動作はまず中止し、原因が分からないまま何度も試し直すことは避けます。再開や増量の際は、複数の条件を一度に変えず、何を変えたか記録すると振り返りやすくなります。

椅子からの立ち座りも、腰痛の治療メニューとは限らない

椅子から立つ動作は、脚やお尻を使う運動の候補です。運動を取り入れられると確認できた方が、具体的な動きの例を知りたい場合は、椅子から始めるスクワットの記事をご覧ください。

ただし、そこで紹介する回数は、腰痛のある方への個別処方ではありません。立ち座りで腰の痛みが強まるなら、回数をこなそうとせず中止して相談します。

デッドリフトや腹筋運動は、名前だけで良し悪しを決めない

「デッドリフトは絶対に悪い」「腹筋をすれば必ず治る」という言い切りは避けましょう。症状、経験、負荷によって適否は変わります。ただし、腰痛のある初心者がこの記事だけで重いデッドリフトを始めることは勧めません。必要性や進め方は、状態を評価できる専門職と相談してください。

体幹運動にもいろいろな方法があります。「この種目が腰痛に一番効く」と決めつけて、痛みが増す動作を続ける必要はありません。

プランク中に腰が痛む場合は、プランクの中止・受診と負荷の見直し方へ。痛いまま試し直さず、症状の確認と再開条件の相談から考えます。

運動中・直後・翌日の変化を確認する

運動中に痛みが強くなる場合は、いったん中止してください。新たなしびれや力の入りにくさがあれば、単なる筋肉痛と考えて続けず、前半の受診案内に沿って相談します。

運動中だけでなく、その後や翌日の生活も確認しましょう。痛みの点数に加えて、「椅子から立てるか」「いつもの距離を歩けるか」「眠りに影響したか」を記録すると、生活の変化を伝えやすくなります。

運動前に症状を記録し、運動中の変化を相談し、翌日に歩行など日常生活への影響を振り返る3場面の挿絵
確認するのは痛みだけではありません。運動前・運動中・翌日の生活の変化も記録します。

次の表は相談や振り返りに使う記録例で、運動許可を判定する基準ではありません。

確認する時点記録すること
運動前腰の症状、脚の症状、普段の動作ができるか
運動中何をどれだけしたか、痛みが増したか、新しい症状が出たか
運動後・翌日症状の変化、歩行・立ち座り・睡眠への影響

たとえば、「運動後、椅子から立つのがいつもよりつらい」「夜に痛みで目が覚めた」なら、その変化を伝えて内容を見直します。新しい脚の症状や尿・便の異常があれば、記録を続けて様子を見るのではなく、冒頭の受診案内に沿って行動してください。

「痛みが10点中3点以下なら全員安全」のような、共通の数値で判断することはできません。また、翌日悪化しなかっただけで、安全が保証されるわけでもありません。

よくある質問

筋肉痛なら、そのまま続けていいですか?

記事だけでは、今の痛みが筋肉痛なのか、別の問題なのかは判断できません。特に、しびれや力の入りにくさ、急に強くなる痛みを「効いている証拠」と考えないでください。いつ出たか、どの動作で変わるかを記録し、判断に迷う場合は相談します。

ストレッチだけで治せますか?

ストレッチが運動の一部になる場合はありますが、すべての腰痛を治せる方法ではありません。どの運動を選ぶかは、症状や目標に合わせて考えます。伸ばしたときに痛みが強くなる動作を、無理に続ける必要はありません。

筋トレは週に何回すればいいですか?

一般的な健康づくりの目安と、腰痛に対する運動の処方は分けて考えます。受診中の方は担当者と頻度を決めましょう。腰痛のある人全員に「週2回なら安全」「毎日なら早く治る」とは言えません。

スクワットをするときだけ腰が痛い場合は?

まず、その動作を無理に続けないことです。受診を急ぐ症状を確認したうえで、スクワット中の腰痛と負荷の見直し方を参考にしてください。記事だけで原因を特定することはできません。

今日の一歩は、状態と困っている動作を整理すること

腰痛のある日の目標は、決めた回数を必ずこなすことではありません。まず受診が必要な症状を確認し、運動を検討できる場合は、自分の状態に合う内容を選びましょう。

今日できる準備は、症状と生活の目標を短くメモすることです。たとえば「いつから痛む/どの動きで変わる/脚の症状はあるか/買い物まで歩けるようになりたい」と書けば、相談の入口になります。分からない項目は、無理に原因を想像して埋めなくて大丈夫です。

相談時には「どの運動から始めるか」「どれくらい行うか」「どんな変化があれば中止・再相談するか」を確認しましょう。痛みの改善に加えて、取り戻したい生活動作まで共有することが、運動を選ぶ手がかりになります。

具体的な種目の読み方は自宅・器具なしの基本メニューにもまとめています。こちらも、腰痛のある方全員への治療メニューではありません。

参考資料と、この記事の限界

資料再確認:2026年10月6日。運動後の記録表や相談のメモは、資料の考え方を日常で使いやすくするための編集上の例です。特定の回数・種目で治療効果を確認した研究結果ではありません。

この記事は一般的な情報で、診断・治療を代わりに行うものではありません。免責事項もご確認ください。

この記事を書いた人
理学療法士

理学療法士/「ひじりの筋トレ健康ノート」運営者。病院で理学療法士として働いています。筋トレの始め方や健康づくり、痛みが気になるときの運動の考え方を、参考資料を示しながら分かりやすくお伝えします。

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