膝が痛くても筋トレしていい?受診の目安と負荷の調整方法

膝が痛いときの筋トレ。受診の目安と負荷の調整を確認する記事の表紙 痛みと運動

「階段で膝が痛むけれど、筋トレをしていい?」「筋肉をつけたいのに、スクワットがつらい」と迷っていませんか。

膝の痛みがあっても、状態に合った運動が役立つ場合はあります。ただし、痛みの原因や腫れ、ケガの有無によって必要な対応は変わります。 まず受診の目安を確認し、そのあとで運動の種類と量を考えましょう。

この記事では、受診を急ぐ症状、運動の根拠、自宅で行う運動の例、負荷を見直す方法を順番に説明します。一般的な情報であり、読者一人ひとりの診断や運動の許可を行うものではありません。治療中の方は担当の医師・理学療法士の指示を優先してください。

この記事で確認する順番

  1. 強い痛み・腫れ・ケガなど、受診を優先する症状はないか。
  2. 自分の膝の状態に、紹介する運動が合うか。
  3. 運動中だけでなく、夜や翌日の生活がどう変わるか。

「痛みが何点以下なら全員大丈夫」という一律の判定はしません。

最初に確認:筋トレより受診を優先する症状

次の症状がある場合は筋トレを中止し、速やかに医療機関へ連絡し、当日中の受診を含めて対応を確認してください。

  • 膝がとても痛い、体重をかけられない、膝を動かせない。
  • 膝が大きく腫れている、形が変わっている。
  • 膝が引っかかって伸びない、ガクッと崩れる、痛みを伴って引っかかる。
  • 発熱や悪寒などがあり、膝が赤く熱を持っている。

受診を急ぐ症状は英国NHS「Knee pain」を参考にしています。日本では医療機関や地域の救急相談窓口へ相談してください。自力で移動できないほどの状態や大きな事故などでは、救急要請も検討してください。

急ぐ症状がなくても、ケガのあとから痛みが続く、歩行や階段がつらい、数週間たっても改善しない場合は整形外科などへ相談しましょう。腫れや熱感が新たに出た場合も、次の筋トレまで様子を見るだけにせず相談してください。

膝が痛いときの確認順序。強い痛み・腫れ・発熱などは受診を優先し、続く痛みは相談。運動は状態に合わせて選ぶ。
膝が痛いときは、運動の種目を選ぶ前に受診の目安を確認します。

図は確認する順番の案内です。該当する症状があれば、その項目の対応を優先します。図に当てはまらないことだけで「運動して大丈夫」とは判断できません。

「膝が痛い」だけでは原因は決められない

膝の痛みには、使いすぎによる腱の問題、膝のお皿の周りの痛み、半月板や靱帯のケガ、変形性膝関節症など、さまざまな原因があります。赤く腫れて熱を持つ場合には、感染などの確認が必要なこともあります。

痛む場所だけで病名を決めたり、「筋肉が弱いから痛い」と決めつけたりすることはできません。 転んだ直後の膝と、以前から痛みがあり診断を受けている膝では、同じ運動を勧められないことがあります。

たとえば「スクワットのときだけ痛む」場合も、回数や重さを増やした影響なのか、別の問題があるのかは本文だけでは判断できません。動作を見直す方法はスクワットで膝が痛いときの確認ポイントで説明しています。

相談するときは、痛む場所に加えて「転んだ・ひねったなどのきっかけ」「いつから」「階段・歩行・立ち座りのどれで困るか」を伝えましょう。病名の一覧から自分で診断するより、実際に困っている動作を整理するほうが相談の材料になります。

運動が役立つ根拠:変形性膝関節症の場合

変形性膝関節症は、膝の軟骨だけでなく、関節全体の変化が関わる病気です。この病気の治療では、筋力トレーニングや歩行などの運動が重要な選択肢になります。

英国NICEのガイドライン(NG226、1.3.1〜1.3.3)は、変形性関節症の人に、状態に合わせた筋力運動や有酸素運動を勧めています。必要に応じて専門家が指導する運動も検討します。始めた時期には痛みや不快感が増えることもある、と説明しています。

一方、2024年のCochraneレビューでは、運動によって痛みや動きやすさが改善する可能性が示されました。ただし、根拠の確実性は低〜中程度で、比較する治療によって結果が変わり、本人がはっきり感じるほどの変化かどうかは不確かでした。

「運動が治療の選択肢になる」という推奨と、「必ず大きく改善する」という保証は別です。 また、これらは変形性膝関節症などを対象にした情報です。原因不明の痛みや、ケガの直後の膝へ、そのまま当てはめることはできません。

太ももの前の筋肉は膝を伸ばすときに働き、お尻の筋肉などと協力して立つ・歩く動作を支えます。運動の目標は、筋肉を大きくすることだけでなく「椅子から立ちやすくする」「買い物へ歩いて行けるようにする」といった日常の動作にも置けます。軟骨が元どおりになると約束するものではありません。

たとえば、目標を「毎回たくさん鍛える」だけにすると、回数をこなせたかに注意が向きがちです。「いつもの椅子から立つときの困りごとが減ったか」も記録すれば、相談したい変化が具体的になります。これは効果の保証や研究で決められた評価法ではなく、日常生活を目標にするための考え方です。

自宅で行う運動の例:まず適しているか確認する

以下は英国NHSのDynamic Healthが紹介する運動を参考にした例です。新しいケガや強い腫れがある方の自己流リハビリ用メニューではありません。 原因が分からない、適しているか不安、手術後や治療中という場合は、始める前に担当者へ確認してください。

1.椅子に座って膝を伸ばす

安定した、キャスターのない椅子に座り、足を床につけます。上体を起こしたまま片方の膝をゆっくり伸ばし、ゆっくり戻します。伸ばしきろうと無理に押さえつけず、動かせる範囲で行います。

太ももの前の筋肉を使って膝を伸ばす練習です。脚を高く振り上げる競争ではありません。最初から足首に重りをつける必要はありません。膝の痛みが増える、引っかかる感じが出る場合はその動作をやめ、適した運動か相談しましょう。

2.椅子から立って、ゆっくり座る

足が床につく安定した椅子を使い、周りの物を片づけます。足を腰幅程度に開き、膝と足先をおおむね同じ方向へ向けます。反動をつけずに立ち上がり、ゆっくり座ります。

低い椅子でつらい場合は、まず座面の高さなどを相談して調整します。転びそう、膝が崩れる、普段の立ち座りでも強く痛む場合は、一人で反復練習をしないでください。動作の段階を知りたい方は椅子から始めるスクワットの練習も参考になります。そちらの回数を膝痛の治療量として流用する必要はありません。

回数は「同じ10回」を全員に当てはめない

必要な量は、病気の種類、今の筋力、動き方、運動後の状態によって変わります。指示された回数がある場合はそれを優先し、うまく行えないときは担当者へ伝えてください。

たとえば運動してよいと確認できている方なら、最初は少ない回数で動きと症状を確かめ、余裕があるかを見ながら調整します。回数を達成するために痛みを押して続ける必要はありません。 やり方が安定する前に、重り・回数・セット数をまとめて増やさないようにしましょう。

「回数・深さ・重さ」は一度に増やさない

負荷とは、身体にかける運動の負担のことです。重りだけでなく、繰り返す回数や動かす範囲も関係します。運動が適していると確認できたら、調整するときはどの条件を変えたかをメモしましょう。

たとえば前回より回数を増やし、椅子を低くし、さらに重りも持つと、症状が増えたときに何を見直せばよいか分かりにくくなります。どれを増やすか迷うときは、担当者と一つずつ相談するほうが変化を共有しやすくなります。これは全員に同じ増やし方を処方するものではありません。

痛みは、運動中だけでなくその後も確認する

変形性膝関節症の運動では、多少の不快感が出ることがあります。ただし、原因が分からない痛みを「運動を始めたから普通」と扱わないでください。鋭い痛み、急な腫れ、膝が崩れる感覚などが出た場合は中止し、冒頭の受診目安を確認します。

運動を行える状態でも、負荷が合っているかを見直すには、その日の夜や翌日の生活への影響も役立ちます。これは診断の基準ではなく、医療者へ状況を伝えるための観察です。

確認する時点記録しておくこと
始める前いつもの痛み、腫れ、歩きやすさ
運動中痛む動作、途中で増えた症状
終わった後痛みが落ち着くか、腫れの変化
夜・翌日眠り、歩行、階段への影響

いつもより痛みが続く、睡眠や翌日の歩行がつらくなる場合は、同じ量を繰り返さず見直しましょう。回数を減らす、曲げ伸ばしを小さくする、別の運動へ変えるといった選択肢を担当者と相談します。改善しない、悪化する場合は受診を優先してください。

運動の前・中・後・夜と翌日の4つの時点で、痛み、腫れ、歩きやすさを記録する案内
メモは膝の変化を伝えるためのものです。数値や図だけで運動の安全性を判断しません。

短いメモの例:回数より、生活の変化も残す

次は、書き方を説明するための架空の記録です。運動をしてよい状態か確認できている人が使う相談用の例で、治療量や中止の数値基準ではありません。

  • 始める前:いつもの椅子から立つときに膝が気になる。腫れは昨日と比べてどうか。
  • 行った内容:椅子に座る運動。回数と、前回から変えた条件を書く。
  • その後:運動中の変化、落ち着くまでの様子、夜の眠りをメモする。
  • 翌日:いつもの距離を歩けたか、階段で困りごとが増えたかを書く。

毎回長い日記を書く必要はありません。「前回との違い」が分かる短い言葉で十分です。新しい腫れや鋭い痛みなどが出た場合は、記録を続けることより中止と相談を優先してください。

よくある疑問

スクワットは膝に悪いの?

種目の名前だけでは決められません。深さ、重さ、回数や膝の状態によって、取り組める範囲は変わります。痛みが出る深さまで無理にしゃがむ必要はありません。受診が必要な症状がなく、運動してよいと確認できてから負荷を調整します。

痛みが完全になくなるまで、ずっと休むべき?

ケガ直後など、負荷を減らす必要がある場合はあります。一方、変形性膝関節症では、状態に合わせた運動が治療の一部になります。休む期間や動かせる範囲を確認し、指示のないまま長く休み続けることも、無理に鍛え続けることも避けましょう。

歩く運動と筋トレは、どちらを選べばいい?

変形性関節症では筋力運動と有酸素運動の両方が選択肢になります。片方だけを全員に勧めるのではなく、膝の状態、今できること、生活上の目標に合わせて選びます。歩くことで痛みや腫れが増える場合は、歩数目標を達成するために距離を延ばさず相談してください。

両者の役割の違いはウォーキングと筋トレの違いで説明しています。一般的な運動量を、膝痛のある方の治療量にそのまま置き換える必要はありません。

毎日やれば早くよくなる?

毎日行うことだけで早く改善すると約束はできません。必要な休息や運動量はメニューと状態によって変わります。担当者から頻度の指示がある場合はそれを優先し、指示がなければ、種目・回数・休む日の組み方を相談しましょう。自己判断で同じメニューを急に倍に増やすより、運動後の反応を伝えることが大切です。

サポーターやサプリを先に買ったほうがいい?

まず原因と必要な対応を確認しましょう。道具や商品を買うことだけで、受診や運動の調整を代わりにできるわけではありません。サポーターなどが必要かは、状態や目的を担当者と相談して選べます。

相談するときは、この4つをメモする

診察やリハビリでは「いつから」「どの動作で」「腫れやケガはあるか」「運動後にどう変わるか」を伝えると、状況を共有しやすくなります。「階段を楽に上りたい」など、できるようになりたいことも添えてください。

まず今日の膝の状態を確認してください。受診を急ぐ症状があれば相談を優先し、原因が不明なら運動の適否を確認します。すでに運動の指示を受けている方は、今回のメモを使って変化を担当者へ伝えるところから始めましょう。

膝が痛いときは、まず受診の目安を確認し、そのうえで自分に合う運動を選びます。重いスクワットをすることだけが筋トレではありません。日常の動作を続けるために、状態と反応に合わせて進めましょう。

参考資料

資料確認日:2026年10月6日。

この記事を書いた人
理学療法士

理学療法士/「ひじりの筋トレ健康ノート」運営者。病院で理学療法士として働いています。筋トレの始め方や健康づくり、痛みが気になるときの運動の考え方を、参考資料を示しながら分かりやすくお伝えします。

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